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栃木県立中央公園内 「旧宇都宮商工会議所」

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宇都宮の中心市街地から少し西に向かった先、栃木県中央公園の南端にそれはひっそりと建っています。歴史を感じさせる建築物のポルティコ(柱廊状の車寄せ)部分が植栽に囲まれながらたたずむ姿は、まるで祠のように静寂をもって訪れる者に歴史を伝えているようです。このポルティコの正体は旧宇都宮商工会議所の一部であり、昭和六十年(一九八五)にこの場所へ移築保存されたものです。

残された外壁は、幾何学模様に刻まれた大谷石による装飾がなされています。それにより得られるシャープさと繊細さは、明らかに旧帝国ホテルのフランク・ロイド・ライトから影響を受けたことは明らか。屋上に立つ球体などは、ライトそのものです。

ポルティコひとつ取っても、シンプルさの中に重厚さが表現されており、建築物全体の美意識と技術の高さを物語っています。当時の人たちが、この建築物の保存運動を展開した気持ちもよく分かります。

もともと旧宇都宮商工会議所は、商工会議所創立三十周年の記念事業として、昭和三年(一九二八)、現在の宇都宮中央郵便局の北側付近に建設されました。当初の計画は鉄筋コンクリート構造の一般的な建築物でしたが、地元産の大谷石を使ってほしいという陳情から、化粧材として大谷石を使用することになったといいます。

どのような建築物も、年を追うごとに老朽化していき、そして周辺の環境も大きく様変わりします。建設から五十年余り経った昭和五十年頃、宇都宮商工会議所を別の場所に新築し、同敷地に栃木県救命救急センターを建設する計画が出されました。すると、この歴史的建築物である宇都宮商工会議所を守ろうと、多くの人々や団体による保存運動が起こります。しかし昭和五十四年(一九七九)、多くの議論が交わされるも、最終的に宇都宮商工会議所は解体の憂き目に。だが熱心に行われた保存運動は当時の知事を動かし、現在の栃木県中央公園にその一部を移築・保存される運びとなったのです。

確かに外壁とポルティコのみでは、当時の建築物の持つポテンシャルすべてを伝えることは難しいです。これでは残す意義がなかったのでは、と保存方法のセンスを問う方も多いかと思います。しかしどうしても建築文化を未来へ残したいという意識がそこにあったのは事実。私はそれを支持したいと思い、また評価されるべきであるとも思います。

■旧宇都宮商工会議所
■竣工:1928年
■設計:安 美賀
■所在地:栃木県宇都宮市睦町2-50
■ホームページ:http://www.u-cci.or.jp/kaigisyo/cci06.html

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