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栃木県那須郡那須町 「二期倶楽部本館」

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緑豊かな観光地である那須高原に、『二期倶楽部』という、客室数を抑えたオーベルジュタイプ(フランス語で、宿泊施設を備えたレストランという意味)の先駆けともいえるリゾートホテルがあります。約四万二〇〇〇坪の広大な敷地に、約二四〇坪程度の低層建築が自然と調和しながらたたずむ… その完成度の高いランドスケープに、旅行客はもちろん建築ファンからも一目置かれる、知る人ぞ知るホットスポットです。

 

二期倶楽部本館は、昭和六十一年(一九八六)に建設されました。設計は渡辺明によるもので、躯体は鉄筋コンクリート構造(一部鉄骨構造)。オープン当初は、客室数が六つのみという、非常に大胆なものでした。

自然環境との調和を図るために、全体を低層にまとめ、かつ水平に伸ばした意匠設計がなされており、また、大谷石の壁面と瓦葺の大屋根という重厚かつ伝統的な要素が、躯体とその周囲一帯を和の趣あふれる落ち着いた空間として一体化させています。

 

しかしここからが本領。たしかに落ち着いた空間がそこにはあるのですが、大谷石の目地と大屋根、そして人工池の水面に映り込む外観によって描かれる鮮烈な水平のラインが、圧倒的なインパクトを放っています。訪れる者の目を引きつけて離さないほどの力を持つそのラインは、静寂な落ち着きの中にあって、胸躍る期待感をくすぐります。この対極の同居は、そう簡単に味わえるものではありません。

エントランスまでのアプローチや外観、陰影の効いた造作が映える館内には、派手な看板やサインなど見受けられませんが、行くべきところへと自然に誘われるかのように意図された動線が認識できるのは、設計の綿密さと光と影の巧みな利用、そして前述の通り、期待感を膨らませながら静寂な空間を往来する愉しさが効果的に作用しているのでしょう。

 

■二期倶楽部本館
■竣工:1986年
■設計:渡辺明
■所在地:栃木県那須郡那須町高久乙道下2301
■ホームページ:http://www.nikiclub.jp/

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