建築探訪・写真・ウェブなどに関して徒然書き綴る私的実験室的なサイト
訪れたさまざまな建築物やランドスケープについて気まぐれに綴っています。
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栃木県益子町 「フォレスト益子」

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本当の保養とは

昨今のさまざまな多様化・マニュアル化の弊害でしょうか、また「勿体ない病」のせいでしょうか、保養の目的で観光地に訪れたはずが、なぜか両手に土産を持ちながら小走りに名所と名店を廻り… その結果普段使わない筋肉まで痛めてしまうこの体たらく。
さしずめ観光のジレンマといったところでしょう。そんな有様に疑問を感じておられる諸兄の方々は、『何もしない』ことの尊さと難しさにお気づきのことかと思われます。
仕事とプライベートの事情が複雑に絡み合う日常を抜けだして、ただ「何もしない」行為を満喫する、これからの一歩上、高位の保養とはこういうことなのかも知れません。

では本当の保養地とは何だろう…

それは、何もしなくていいと思わせる空間演出と緩やかなる時間を感じさせる工夫であると私は考えます。
そしてこの問いに対する到達点の一つとして、(好みや程度はそれぞれですが)「フォレスト益子」を挙げたいと思います。

フォレスト益子は、前身である国民保養センターに替わり、平成十三年より広大な益子の森の玄関として、静かにさりげなくたたずんでいます。

遊歩道の拠点であり、宿泊施設とレストラン、資料室などを備えるフォレスト益子は、直線と曲線の紡ぎが織りなすデザイン演出、また森の緑と混ざり合う環境と景観の調和があります。
建物に沿って湾曲した歩道に架かる庇はルーバー状で、時の経過によって落とす影を変えてゆき、そして鉄とガラス・木と緑で組まれた空間にさまざまな表情を伺いながらも、その姿は常に穏やか。
そこは先述の通り緩やかな時間の流れ、いわゆる「悠久」を感じ入る空間です。

益子の森の昼と夜、雑踏から隔離され、ただ自然に溶け込んでまどろむ。
そんな保養を味わってみるのも悪くありません。
そこにいると改めて、自然の昼は明るく、夜は暗く、そしてその中にあって「何もしない」という行為がどれだけ心身を潤してゆくかに気づくはずです。

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■フォレスト益子
■竣工:2001年
■設計:内藤 廣
■所在地:栃木県芳賀郡益子町大字益子4231
■ホームページ:http://www.town.mashiko.tochigi.jp/g01.html

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