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映画『コーヒー&シガレッツ』

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読書の秋、そして芸術の秋と、巷ではよく言われていますが、秋はやっぱり映画もいいもの。

そんな秋の夜長にゆっくりと嗜んでみたのは『コーヒー&シガレッツ』。

『ストレンジャー・ザン・パラダイス』や『ナイト・オン・ザ・プラネット』などで有名な映画詩人、ジム・ジャームッシュが十五年以上に渡って撮りためてきた計十一本のショートストーリーを一本にまとめたものです。

各ストーリーごとに、ロベルト・ベニーニ、トム・ウェイツ、ケイト・ブランシェット、ビル・マーレイなどなど、とても豪華な顔ぶれが、カフェでコーヒーを飲みタバコをふかしながらホントにとりとめのない会話を延々と続けるだけという、実に贅沢(?)な映画でした。

全編オフビートな音楽に刻まれるゆったりとした時間感覚、そしてモノクロームの画面が映える独特な空間の中で、登場人物たちのどこかシニカルでクセのある会話に包まれていると、まるでカフェの隣の席にいて彼らの会話に聞き耳を立てている気分になってきます。

そう、これはドーンと画面から主張がはみ出してくる映画でも、臨場感にグイグイと引き込まれる映画でもありません。

その場の空気を共有する非常に高度な映画なのです。

隣の席の会話にクスッとしたり、なるほど! と思ったりする一瞬の疑似体験、それが大きな魅力であり、凡百の映画とは一線を画した代物。

世間的には「リラックス・ムービー」と言われているようですが、いわゆる「癒し」ではありません。

例えば、ふかふかのベッドで眠りにつくようなリラックスをお求めならば、他を当たったほうがいいでしょう。

このどうでも良さそうでどうでも良くない、皮肉やブラックジョークたっぷりのショートストーリー群は、まさに愛すべき「嗜好品」。

ディナー後の一服といったオトナの嗜みが大変よく似合います。

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